宿泊業と貸室業の境界

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宿泊業と貸室業の境界

「宿泊料を受けて、人を宿泊させる」旅館業営業と住宅宿泊事業。自ら所有し、又は使用権限を有する建物に人を寝泊まりさせる、という意味においては、貸室業と違いはないように見えます。

しかし、現実に旅館業法・住宅宿泊事業法が存在しており、宿泊事業者がそれらの法律上必要な許可ないし届出を行なった上で営業をしているところを見ると、両者は法的に異なる定義付けがされているということが言えそうです。

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境界は「生活の根拠」と言えるか否か


宿泊事業と貸室業の違いを判断する上でのポイントを端的に言うと「その入居者もしくは宿泊者の生活の本拠が、その施設にあるかどうか」となります(その他にも維持管理責任の所在など色々なポイントがあります)。

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「生活の根拠」と言えるためには?


それでは、「生活の本拠」とは何をもって定義するのでしょう? 

その判断基準のひとつに、「使用期間が1ヶ月以上」と言うものがあります(厚生省生活衛生局指導課長通知)。

つまり、使用期間が1ヶ月未満の場合は、「生活の本拠」と言うことができず、必ず旅館業もしくは住宅宿泊事業法の範疇となります。

このことから、いわゆるウィークリーマンションは宿泊事業に含まれることが明らかとなり、マンスリーマンションにおいては、貸室業の範疇であると言うことができます。

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住宅宿泊事業とマンスリーマンション


住宅宿泊事業法では、年間の営業可能日数が最大で180日と定められています。又、届出住宅においては以下の3要件のいずれかを満たしている必要があります(施行規則(厚生労働省・国土交通省令第二号))。

  1. 現に人の生活の本拠として使用されている家屋
  2. 入居者の募集が行われている家屋
  3. 随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋

上記3類型のうち、共同住宅の一室で営業する場合などは、類型②の場合がほとんどでしょう。

ここで、一般的な建物賃貸借の入居者を募集しながら民泊を営業する場合、募集広告を見た入居希望者がいたとして、この入居希望者と賃貸借契約を結ぶとなると、(当該賃貸借契約の期間にもよりますが)民泊としての営業は当面諦めざるを得なくなります。

一方、マンスリーマンションとして定期建物賃貸借契約による入居者の募集を行ない、賃借人と1ヶ月間の定期賃貸借契約を結んだ場合、当該賃借人が退去した後、再び民泊として営業可能です。

例えば、4月や11月といった行楽シーズンは住宅宿泊事業法に基づく民泊として営業し、それ以外の閑散期は、マンスリーマンションとして営業する、といった柔軟な経営戦略を採ることも可能です。

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残り185日をマンスリーマンションとして営業する


京都市のように宿泊事業者感の競争が激化する地域では、閑散期をどう切り抜けるかは、経営戦略上重要なポイントとなります。

営業日数の上限が定められているという住宅宿泊事業法の最大の弱点は、貸室業と組み合わせることによって、むしろ長所とすることもできるのです。

なんとなく不自由な感じの否めない住宅宿泊事業ですが、それなりの長所(共同住宅内での営業の可能性、マンスリーとの折中)もある、というのが私の印象です。要は適材適所、ご検討いただく価値はあると思います。

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