【住宅宿泊事業】Airbnbにおける180日の計算方法が変更されました

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30日以上の予約も宿泊日数にカウントされます

住宅宿泊事業を営む皆さまの多くは、Airbnbから180日ルールについての通知を受け取っていることと思います。

この通知と、同社サイト内ヘルプセンター「日本国内の「年間上限180泊のルール」に関するよくある質問」という記事によれば、以下2点において、これまでと異なる対応が取られるということがわかります。

  1. これまで宿泊日数の上限である180日にカウントされなかった30日を超える長期の予約も、2021年4月1日以降は、当該上限の計算に含める、ということ
  2. 2021年8月以降、住宅宿泊事業にかかる届出住宅のリスティングにおける予約宿泊数を観光庁と共有すること

なぜ、このような変更が起きたのでしょうか?これまでと何が違い、今後はどういう対応を取る必要があるのでしょうか?

ここでは、制度の仕組みから、今後実際に起こりうる実務的な問題点まで、順にご説明していきます。

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なぜ、30泊以上の予約は、これまでカウントされなかったのか?


上限のカウント方法が変更される理由を考える前に、なぜ、これまでは30日以上の予約が宿泊カウントに含まれなかったのか?なぜ、「30日」以上なのか?について見ていきます。

旅館業と貸室業

旅行者に宿泊する場所を提供する旅館業と、生活するための住居を貸し出す貸室業。不動産を寝泊まりする場所として提供する、という点に着目すれば、両者はとても似たビジネススタイルと考えられます。

旅館業を行うには、許可取得や届出などの法的ハードルがありますが、自分の所有(管理)する建物を賃貸する貸室業は、特別に許認可を得る必要はありません。

例えば1泊2日の賃貸借契約などを許してしまえば、旅館業の許可を取る必要性などは失われてしまいます。そういうわけで、両者の間に一定の線引きを設ける必要がありました。

(注)住宅宿泊事業は旅館業の一類型であるため、ここでは旅館業に含んで考えます。

「30日」は生活の本拠といえる境界線

それでは、旅館業と貸室業の区別は一体どう判断されるのでしょうか?

それは、「その入居者もしくは宿泊者の生活の本拠が、その施設にあるかどうか」によって決められます。(詳細は、宿泊業と貸室業の境界をご覧ください。)

そして、生活の本拠と言えるか否かの判断基準のひとつに、「使用期間が1ヵ月以上である」という厚生労働省の通知があり、その他の判断基準よりわかりやすかったためか、宿泊業界では「30日以上の予約は旅館業に該当しない」ということが言われるようになりました。

住宅宿泊事業法が施行された2018年以降、Airbnbが30日以上の予約を「宿泊」日数にカウントしていなかったのは、おそらく上記のような理由によるものと推測されます。30日以上の予約は、「宿泊」ではなく、賃貸借契約に基づく貸室業の範疇だから宿泊数にはカウントしない、という論理です。

※実際には、「1ヵ月」というのは目安であり、自治体によって他の期間設定を行うことも可能です。また、その他の判断基準も考慮する必要があります。

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なぜ、これからはカウントされるのか?


  

「30日」の基準は変わっていない

Airbnbではこれまで、(おそらく)上記のような理由から30日以上の予約を宿泊数にカウントしてこなかったわけですが、2021年4月1日以降の宿泊にかかる予約は、期間の長短に関係なく、すべて180日の宿泊上限にカウントする、と決定しました。

なぜ、このような方向転換が起きたのでしょうか?これは、旅館業法や住宅宿泊事業法の改正によるものでも、上記「30日」の基準が変更されたわけでもありません。

これは、Airbnbが住宅宿泊仲介業者として、より遵法的な運用を選択したことに起因しているようです。

ガイドラインの規定に従った

住宅宿泊仲介業者とは、簡単に言えばゲストとホストの間で予約を仲介する業者です。

住宅宿泊事業の仲介を行うには住宅宿泊仲介業者である必要があるため、俗に言うOTAサイト運営会社の多くは、この住宅宿泊仲介業者としての登録を受けています(旅館業の仲介を行う場合は、この登録を受ける必要はありません)。

住宅宿泊事業法では、「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊管理業者」「住宅宿泊仲介業者」の三業者を定めており、住宅宿泊仲介業者についても、他の事業者と同様に守るべきルールが定められています。

このルールのなかに、住宅宿泊事業法施行要領、いわゆるガイドラインと呼ばれるものがあります。そして、このガイドラインの中に、住宅宿泊仲介業者が守るべき事項として、次のようなことが定めれらています。

マンスリーマンションについては、一時的な宿泊を主とする上記施設と混在させて仲介サイトに表示させることは、両者の権利・義務関係や契約形態が異なる部分があるため、トラブルを事前に防止する観点から適切ではなく、別サイトにおいて管理することが望ましい。

つまり、旅館業にかかる営業と貸室業にかかる営業を、同一サイトに掲載することは望ましくない、とガイドラインでは言っているのです。

今回のAirbnbの180日カウントについての運用の変化は、どうやらこの規定に基づいているようです。この件について民泊制度コールセンターに問い合わせをしてみたところ、ガイドラインの当該箇所について説明を受けたので、おそらく、そういうことなのだろうと思います。

ちなみに、ガイドラインでは、この後、同一サイトに掲載する場合必要となる措置について記載されています。つまり、OTAサイトに貸室業と旅館業の両方を掲載することが、絶対不可能というわけではないのです。気になる方はガイドラインの55ページあたり(改定でズレる可能性あり)に記載されていますのでご確認下さい。

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今後起こりうること及びその対策


長期予約が入って、リスティングが一発で非表示に

今後の注意点として、まず第一に考えられるのは、半年以上の予約が入り、いきなり180日の上限を超えてしまい、リスティングが非表示になってしまうことです。それだけならまだしも、上限を超えてしまうと法令違反になってしまうのでご注意ください。

マンスリー契約は不動産賃貸業者のサイトから募集しましょう

この問題に対する解決策は、30日以上の契約(=貸室業の対象となる契約)は、マンスリー物件などを扱う不動産賃貸業者の運営するサイトから募集することです。

そもそも住宅宿泊事業の届出住宅の類型のひとつには、「入居者の募集が行われている家屋」というものがあり、この類型に該当する届出住宅では、もとより賃貸業者等による入居者の募集が行われているはずですので、これを活用して30日以上の利用者(賃貸借契約)を募集しましょう。

観光庁、自治体から問い合わせの可能性

今後はAirbnbだけでなく、その他OTAサイトでも宿泊日数についての情報を観光庁と共有していくと思われます。各OTAサイトでは上限を超えていなくとも、全体として180日を超えている場合、観光庁から情報を得た自治体により指導又は罰則などを受けることが考えられます。

複数のOTAサイトを使って予約の募集をしている方は、それぞれのOTAサイトの総合計宿泊数を注意深く管理し、上限の180日を超えてしまわないようお気を付けください。

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まとめ


いかがだったでしょうか?

Airbnbの宿泊上限のカウント方法の変更は、住宅宿泊仲介業者としてのAirbnb自身の運用の変更に基づくものであり、ホストである住宅宿泊事業者や住宅宿泊管理業者に直接影響を及ぼす法規範の変更によるものではないことがわかりました。

皆さまのなかには、30日基準の運用が変わり、民泊とマンスリーマンションを併用することが違法になったと考えた方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではないことをご確認下さい。

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