令和3年4月1日に公布された「京都市建築物等のバリアフリーの促進に関する条例」及び同施行規則の改正により、同年10月1日以降に建築等を行うすべての宿泊施設を対象に、バリアフリー基準が強化されます。
この改正は、今後、京都市内で建築される宿泊施設に大きな影響を与えるものです。
ここでは、事業をはじめる方にとって最も気になるポイントである、対象となる施設、適用される時期についての詳細を確認し、最後に具体的に必要となるバリアフリー基準について見ていきます。
バリアフリー条例が適用される宿泊施設
この条例の適用を受ける宿泊施設とは、ホテル、旅館、簡易宿所などの旅館業法に規定されるすべての宿泊施設のことを言います。住宅宿泊事業法に基づく届出住宅は対象となりません。
これらの宿泊施設の「新築」「増築」「改築」「大規模の修繕」「大規模の模様替え」をする場合、また、居宅などの他用途からこれらの宿泊施設へ「用途変更」する際に、バリアフリー条例の適用を受けます。
10月1日までに協議申請をすると間に合う?
この新基準は、10月1日以降にバリアフリー条例第7条で定める協議申請を行った場合に適用されます。つまり、9月30日までにこの協議申請を行えば、原則として新基準の適用を免れることができます。
ただし、急いで協議申請のみ間に合わせればよいというわけではありません。協議申請の日から6か月以内に工事に着手できなかった場合は、改正後の新基準が適用されてしまいますのでご注意ください。
※協議申請から6か月を超えて着工した場合でも、10月1日時点で既に着工して工事中である場合は、改正前の基準が適用されます。
この辺りの詳しい説明は、「京都市建築物等のバリアフリーの促進に関する条例の一部改正に関する解説書」という資料の41ページ以降に記載されています。WEB上で見つけられるので、確実に理解したい方は検索してみてください。
強化される主なバリアフリー基準
宿泊施設におけるすべての客室について、新しく基準が設けられ、次の通り整備することが必要になりました。
詳しくは、「京都市建築物等のバリアフリーの促進に関する条例の改正について(概要)」という書類をご確認ください。WEB上で確認できます。
(1)ベッド周辺の空間①
ベッドの側面に、車椅子からベッド上へ移動するためのスペース(幅100cm 以上)を確保すること
(2)ベッド周辺の空間②
ベッドの周辺に、車椅子が方向転換するためのスペース(直径120㎝以上))を確保すること
(3)客室内通路
車椅子が通れるよう、幅100㎝以上(方向転換が必要ない箇所は80cm以上)を確保し、段差なしとすること
(4)便所・浴室
・腰掛け便座及び手すりを設置すること
・便座,浴槽の横に車椅子が寄り付ける空間を確保すること
・便所、浴室の出入口は、幅75㎝以上を確保し、段差なしとすること
(5)エントランスから客室までの経路
通路の幅120㎝以上、出入口幅80㎝以上とすること(これは従来通りです)
2.エレベーター設置基準の拡充
エレベーターの設置基準が、以下の通り拡充されました。
1000㎡以上の施設
共用エレベーターの設置が必要(従来通り)
200㎡~1,000㎡未満
次の場合は設置が必要。
・地上階に客室の出入口がない場合
・地上階及びその直上階・直下階以外に利用居室を設ける場合
200㎡未満の施設
地上階に客室の出入口がない場合は、設置が必要
※一棟貸し・メゾネットタイプ
建物全体が1の客室である「一棟貸し」やメゾネットタイプ(室内が内階段で複数階に分かれているタイプ)の客室であっても,客室出入口と、寝室・便所・浴室のいずれかとの間に階段又は段差がある場合は,エレベーター等の設置必要となります。
3.小規模宿泊施設における供用便所の基準の拡充
1000㎡未満の施設に共用便所を設ける場合は、以下の基準を満たさなければなりません。
1.腰掛(洋式)便座を設置すること
2.手すりを設置すること
3.出入口は、幅80㎝以上とし、引き戸又は外開き扉とすること
4.車椅子から便座に移動するためのスペースを確保すること
5.便所までの経路は、幅を原則120㎝以上確保し、段差なしとすること
4.施設のバリアフリー情報公表制度の新設
施設のバリアフリー対応に関する情報をインターネットで公開し、京都市に届け出るしくみが新設されました。
まとめ
バリアフリーの基準が大きく強化された結果、今後の京都市では、これまで多く見られた簡易宿所は鳴りを潜め、大きなホテル・旅館、又は住宅宿泊事業法に基づく届出住宅が宿泊施設の主流となっていきそうです。